西形先生がアルキル基と水素原子のアルキンへの付加を銅触媒系で精密制御に成功
-シス及びトランス配置アルケンの自在な作り分けが実現!- 2017.02.10
アルキル置換アルケンは医農薬品を構成する重要な骨格です。アルキル置換アルケンには、アルキル基とそのβ位の水素原子が同じ側にあるトランス構造とそれとは逆のシス構造があり(上図左右の分子)、これまでに様々な合成方法が研究されてきました。しかし、これらアルケン周りの立体化学を制御するのは容易ではなく、特に、炭素-炭素三重結合を持つアルキンへアルキル基と水素原子を同時に付加させる“ヒドロアルキル化”は、一段階でアルキル置換アルケンを合成できるにも関わらず、従来法では立体選択的付加反応の実現が困難でした。
今回、創成科学研究科応用化学分野の西形孝司准教授(テニュアトラック)らは、銅触媒存在下、異なる水素源を用いることでアルキル基のアルキンへの立体選択的な付加を実現することに成功しました。シス構造を持つアルケンはシラン(H[Si])を用いることで、一方、トランス構造を持つものはアルコール/ジボロン(ROH/B2pin2)を用いることで、それぞれの立体を持つアルキル置換アルケンが合成できることを見出しました。この成果は、『ACS Catalysis』(IF=9.3)に掲載され、月間アクセス数は同雑誌のTOP20以内にランクインしました。
アルケン分子を選択的に合成するための方法論として、今後の複雑分子精密合成化学への応用が期待されます。
Tandem Reactions Enable Trans- and
Cis-Hydro-Tertiary-Alkylations Catalyzed by a Copper Salt,
Kimiaki Nakamura, Takashi Nishikata*,
ACS
Catalysis, 2017, 7, 1049–1052, DOI:
10.1021/acscatal.6b03343
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