令和2(2020)年3月1日、大学院創成科学研究科(工学)知能情報工学分野に助教(テニュアトラック)として、相田紗織先生が着任されました。研究室は常盤キャンパス総合研究棟2号館の1階です。
相田先生は今まで、人間が立体視を得るメカニズムに関する研究をされてきました。人間は、左右の目の網膜に生ずる画像の微妙な差で、奥行きなどの立体感を把握しています。逆に、左右の目に微妙に異なる像を見せることで、実際には奥行きの無い平面であるにもかかわらず、一部が浮き上がって見えるようにもできます。この網膜像から立体感を得る仕組みを、主に、心理物理学的方法(被験者に見せるモノを定量的に変えて、どのように見えるか回答してもらう)、生理学的測定法(fNMR(機能的核磁気共鳴法)による脳内の活性部位の特定)、計算機による脳の働きのシミュレーション、の3つの方法により解明してこられました。
これらの研究により、今までに、奥行き減少現象(手前と奥に物があったとき、その間に他の物を挿入すると、元の2つの奥行きが減少して見える現象)、数量過大推定現象(奥行きが一定の場所に配置された場合に比べ、奥行きをバラバラに配置した方が物体の個数が多く見える現象)、など大きな研究成果を得ておられます。
近年ではこれらに加えて、学習機能を持った人工知能を用いて、マウスiPS細胞由来の組織の位相差顕微鏡像から癌細胞(ルイス肺癌細胞)を検出する研究もされています。
山口大学では、工学部知能情報工学科以外にも感性デザイン工学科や時間学研究所などで視覚や人工知能の研究がなされており、今後は大学の内外と連携して研究が大きく発展することが期待されます。