山口大学 大学研究推進機構 総合科学実験センター

飲酒・栄養アンバランス食事および慢性心理的ストレスが動脈硬化症の進行に及ぼす影響の解明

令和元年11月29日掲載

大学院医学系研究科法医学講座 講師 劉 金耀

【利用施設】生命科学実験施設

 厚生労働省が行った「平成25年度人口動態統計」によると日本人の死亡原因の第2位が,「動脈硬化症」に起因する心疾患と脳血管疾患であった.自覚症状がないまま進行していく「動脈硬化症」の予防が重要であり,生活習慣(飲酒・栄養アンバランス食事)と生活環境(慢性ストレス)が動脈硬化症に及ぼす影響が注目されている.そこで我々は,動脈硬化症が発症しやすいApolipoprotein Eとlow-density lipoprotein receptorのダブルノックアウト(AL)と野生型マウスにアルコール(Et),栄養アンバランス飼料(低炭水化物高蛋白質, LCHP)と慢性ストレス(CCS)を与え,動脈硬化症の進行を解析し,動脈硬化症予防に結びつけることを目的として,2015年5月より,生命科学実験施設のSPFエリアにて以下2つの研究を実施した.

  1. 16週間EtとLCHPの投与,または4週間CCSの実施:約2年間,マウスをEtとLCHP,またはCCSを与えることで,動脈硬化症の進行を調査.
  2. 腹部大動脈エコー・免疫染色・電気泳動・PCRを用いた動脈硬化症進行メカニズムの解析:1.のマウスで得られた大動脈と副腎を,形態,細胞,蛋白質と遺伝子レベルの変化を確認することで,CCSが副腎機能の亢進を介し,大動脈炎症誘発性サイトカイン(Tnf-α)と関連するNr3c1およびNfkb1遺伝子発現の同時増加がLCHPで飼育した野生型マウスの動脈硬化を促進する可能性を見いだした1).また,慢性EtとLCHPの同時摂取が,ALマウス大動脈壁内に高い酸化ストレス状態を引き起こし,内皮機能と関与するNOS3および平滑筋細胞増殖と関連するPDGFβの遺伝子発現量を増加させ,動脈硬化を促進する可能性を見いだした2).これらの成果が動脈硬化症治療薬の開発と予防に結びつき,心疾患と脳血管疾患死亡率の低下に貢献することが示唆された.


 研究成果が2018年6月の第24回IALM(法医学国際学会)および2018年9月の第19回ISBRA(アルコール国際学会)にて発表,IMM1) とACER2) に掲載された.

1) Liu J, Himemiya-Hakucho, A, Liu X, Yoshimura K, Fujimiya T. The chronic complex stress combined atherogenic diet accelerates the process of atherosclerosis in mice. Integrative Molecular Medicine, 5, 1-11, 2018,査読有

2) Furuta Y, Liu J, Himemiya-Hakucho A, Yoshimura K, Fujimiya T. Alcohol Consumption in Combination with an Atherogenic Diet Increased Indices of Atherosclerosis in Apolipoprotein E/Low-Density Lipoprotein Receptor Double-Knockout Mice. Alcohol Clin Exp Res., 43, 227-242, 2019, 査読有