山口大学 大学研究推進機構 総合科学実験センター

有機シリカナノ粒子の医学生物学的応用

平成31年1月29日掲載

大学院医学系研究科 器官解剖学講座 西尾 忠、中村 教泰

【利用施設】生体分析実験施設

 我々の研究室では、独自に開発した有機シリカナノ粒子を用い、医学生物学的研究を行っている [1-7]。シリカナノ粒子は様々なサイズの粒子が調製可能であり、生体親和性が高いなど多くの利点がある。しかし、従来の無機シリカナノ粒子の表面にはシラノール基のみが存在し、粒子の多機能化は困難であった。我々は、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランなどの有機シリカ化合物に着目し、これを原材料として新規な有機シリカナノ粒子の開発に成功した [1, 2]。有機シリカナノ粒子は一段階の反応で、サイズ制御及び優れた分散性のものが作製可能である。さらに原材料に使用する有機シリカ化合物の種類により、様々な表面電位や官能基を粒子内外に持たせることができる。粒子の官能基を利用して様々な蛍光色素や金属イオンなどを粒子内部に取り込ませ、蛍光ナノ粒子や複数のイメージング装置での同時観察が可能なマルチモーダルイメージング粒子の作製に成功している [3, 4]。最近では、蛍光イメージングとMRI (核磁気共鳴画像化法) が同時に可能なイメージング粒子を開発し、肝細胞癌担持ラットにおける正常部位と病変部位の肉眼的及び顕微的差異に関する新しい知見を得ている [5]。さらに、ナノ粒子にイメージング機能のみならず治療効果 (光線力学療法、中性子補足療法) を付加させることで、診断と治療の一体化を可能とするセラノスティックス粒子の開発にも成功している。
 生体分析実験施設では、電子顕微鏡装置Quanta 3Dを用いて、作製したナノ粒子の形状やサイズ等の評価を行っている (図1)。我々は、粒子サイズの制御を目的とした様々な粒子合成条件を検討しているが、この上でも本装置は非常に有用である [6]。また、細胞や組織におけるナノ粒子の動態の精密な評価はイメージングや治療効果の理解に重要である。このため、電子顕微鏡レベルでのナノ粒子の組織分布や細胞における局在、さらには細胞の形態変化などを詳細に観察している (図2)。さらに細胞による蛍光ナノ粒子の取り込みを蛍光顕微鏡と電子顕微鏡で連続して観察する光電子相関顕微鏡法 (CLEM) を行い、一細胞における粒子の取り込みや細胞内への移動などの生命現象をナノスケールで精密解析する研究も進めている [4]。このように電子顕微鏡は、我々の有機シリカナノ粒子を基盤とする革新的な医療の開発研究において大いに貢献している。

[1] M. Nakamura, et al. J. Phys. Chem. C 111, 18892-18898 (2007).
[2] M. Nakamura, et al. Nanotechnol. Rev. 1, 469-491 (2012).
[3] M. Nakamura, et al. Chem. Mater. 24, 3772-3779 (2012).
[4] M. Nakamura, et al. ACS Nano 9, 1058-1071 (2015).
[5] M. Nakamura, et al. Sci. Rep. 7, 3953 (2017).
[6] T. Doura, et al. J. Colloid Interface Sci. 526, 51-62 (2018).
[7] M. Nakamura, et al. Enzyme 44, 137-173 (2018).