山口大学 大学研究推進機構 総合科学実験センター

金属イオンをドープした高活性な可視光応答型酸化チタンの合成

平成29年6月27日掲載

大学院理工学研究科 博士後期課程2年 西山尚登

【利用施設】機器分析実験施設

 無機半導体光触媒である酸化チタン(TiO2)は、紫外光照射時のみ、伝導帯に電子が励起することで、価電子帯に強力な酸化力を有するホールを生じる。このホールにより環境汚染物質である有機物の酸化分解し無害化する。しかし、紫外光は、太陽光に約3%しか含まれていない。太陽光有効利用の観点から、可視光応答型光触媒の開発が望まれている。我々は、透析によるゾルの精製過程を導入した新規ゾルーゲル法によって、高比表面積を有するTiO2の合成法を確立している。得られたTiO2ゾルに金属イオンを添加するだけで、可視光応答型TiO2(M-TiO2)の合成が簡単できる。
 この合成法を利用し、白金、クロム、銅イオンをドープした多孔質な可視光応答型TiO2を合成(Pt-TiO2、Cr-TiO2、Cu-TiO2)し、難分解性である4-クロロフェノール(4-CP)の分解活性を評価した。透析水中に溶出した金属イオン濃度を機器分析実験施設の誘導結合プラズマ-原子発光分析装置(ICP-AES)を用いて定量し、TiO2に取り込まれた金属イオン量を見積もった。
 Fig. 1に、ICP-AES測定により求めた透析水中への金属イオンの溶出除去率を示す。透析水中への金属イオンの溶出率はCu > Cr > Ptイオンの順に高く、この結果は、各金属イオンが形成する錯イオンとTiO2の表面電荷の間の静電的相互作用や金属イオンのイオン半径の違いによるとわかった。さらに、2017年に新しく導入されたICP-AESでは、以前の装置よりも検出感度が上昇し、ドープ量が少ない場合の効果を調査できるようになった。Fig. 2 に可視光照射90分後における4-CPの分解効率を示す。4-CPの分解効率はPt > Cr > Cuイオンの順であった。様々な反応条件下で合成したM-TiO2中の金属イオンドープ量をICP-AESにより定量することで、ドープメカニズムを解明することができた。
 これらの成果について、以下の2件が国際誌に掲載済みである。

N. Nishiyama, Y. Fujiwara, K. Adachi, K. Inumaru, S. Yamazaki, ❝Preparation of porous metal-ion-doped titanium dioxide and the photocatalytic degradation of 4-chlorophenol under visible light irradiation❞, Applied catalysis B: Environmental, 176-177, 347-353, 2015, N. Nishiyama, K. Kozasa, S. Yamazaki, ❝Photocatalytic degradation of 4-chlorophenol on titanium dioxide modified with Cu(II) or Cr(III) ion under visible light irradiation❞, Applied catalysis A: General, 527, 109-115,2016,2件とも査読有